飛行機に乗っていると、夜食代わりにアイスクリームが配られることがある。エアラインによって違うが、ハーゲンダッツやベンアンドジェリーズといったけっこう高級なアイスだったりする。乾燥した機内でリフレッシュするにはいいのだが、なぜいつもあんなに硬いのか。アイスクリームという可愛らしい響きとは真逆の、異様に硬い物体が手渡される。高度一万メートル上空の気温はマイナス50℃だというから、尾翼のあたりからアイスクリームの入った網袋をぶら下げて冷やしておいたのではないのか。
これだけ硬いとプラスチックのスプーンでは歯が立たない。中には彫刻刀か!と突っ込みたくなるようなスタイルで力いっぱいガチガチと削りながら食べている人もいるが、周りに飛び散る量のほうが多い。ここは大人しく少し溶けるまで我慢して放置するのが得策である1)。
アイスクリームの一番好きな食べ方は、エスプレッソコーヒーをかける「アフォガート」である。エスプレッソの苦味とアイスクリームの甘さが競いつつ溶け合って珈琲好きの大人が楽しめる味わいだ。さすがイタリア人、美味い食べ方を知っているものだと敬服する。アフォガート(affogart)はイタリア語で「溺れている」という意味だそうで、同僚だったイタリア人もアイスクリームはこうして食べるのが一番美味いと言っていた。とはいえ、単にバニラアイスにエスプレッソをかければいいというものでもなく、そこは微妙な相性がある。限られた範囲の経験値ではあるけれど、僕が一番美味しいと思っていたのは、コヴァ(COVA)のものだった。COVAはミラノの老舗カフェで、東京では有楽町電気ビルと新宿タカシマヤにライセンス出店していたが、18年6月で閉店してしまった。残念に思っていたところ、そのあと、タカシマヤに、ほぼ居抜きで今度はビチェリン(Bicerin)というトリノの老舗カフェのライセンス店がオープンした。そこでも美味しいアフォガートが食べられる。食べられる、というか、バニラアイスもエスプレッソもCOVA時代と全く同じもののような気がする。きっと日本での運営会社は同じところがやっているのだろう。もしかすると、そのうち使うバニラアイスや珈琲豆が変わってくるのかもしれないが、僕としては今のままで良いので、むしろ変えずにいて欲しい。もうひとつ、田園調布駅前の「ペリカンコーヒー」のものも良い。
| ↑1 | 新幹線の中で販売されているスジャータのアイスクリームも固いことで有名だ。乳脂肪分が高く、空気含有量が小さく、低温での管理が徹底していることなどが理由だそうだ。これについては今までいくつものメディアで取り上げられている。 |
月刊「ムー」。UFO
レストランの食べ放題スタイルを、日本語では「バイキング」というが、これは日本だけの言い方である。うっかりすると英語でもそのまま通じそうな気になるが、「v」の発音に気をつけて「ヴァイキング」などと言ってみても、それはあくまでも、1000年くらい前に北欧で暴れていた海賊であって、食べ放題スタイルのことではない。食べ放題スタイルのことは、英語では「buffet」(バフェ)という
大昔の記憶をほじくり返してみても、サンタクロースを信じていた頃を思い出すことができない。小さい頃からかなり理屈っぽく、ある意味ませた子供だったので、サンタクロースの話を聞いても、そんなわけはない、と思ったのだろうか。ただ、朝起きたら枕元にプレゼントが置いてあるのを初めて「発見」した日の記憶はある。たしか、コース付きのレーシングカーセットの大きな箱が枕元にあったのだ。8の字型のレーシングコースを組み立てて、その上を小さなレーシングカーが飛ぶように走った。すごく嬉しかったのだが、サンタクロースがくれたのだ、とは思わなかった。両親のほうも、サンタクロースが持ってきた、という「建前」をあまり押し出してはいなかったように思う。クリスマスそのものが、あの頃(昭和40年代)は、今ほど大きなイベントでもなかった。



