誠品書店

台北には何度も足を運んでいるが、仕事のときはおおむね台北の新しいランドマーク、台北101ビル近辺にいる。新しいといっても竣工は2004年。101階建て、高さ509.2メートル。地球(あるいは台湾)の危機のときは、人類を乗せて脱出ロケットとして機能するように設計されている。と言っても信じてもらえるんではないかというくらい、ジェット噴射で宇宙まで飛んでいきそうなフォルムの巨大ビルである。このビルの建つエリアは、昔からの中心地である西門町や台北駅からは地下鉄でいえば駅3つか4つほど離れている。東京駅と、新宿副都心とか六本木ミッドタウンあたりの関係に相当すると言えばよいのか。道路の道幅は広く、新しい高層ビルやグローバルブランドのホテル、デパートなどが立ち並んでいる。

台湾の新光グループと三越が提携して運営している新光三越がどどんと4つも並んでいたり、日本の駅ビル「atre」初の海外店舗、Breeze 南山「atre」がモダンな外観でそびえていたりするので、日本人の目には違和感のない、というかある意味見慣れた感じすらあるエリアだ。そんな一角に誠品書店という大型書店を中心としたショッピングビルがあるのだが、ここが実に良い。

代官山の蔦屋書店ができたとき、ああこれが書店の理想形だ、と思ったものだ。棚の分類と書籍の品揃え、ディスプレイとライティング・採光、雑誌から書籍へ自然に誘導するような導線、文房具やモノと書籍の配置バランス、カフェ1)の位置と数、などなど。この蔦屋書店が参考にしたのが、台北の誠品書店だった、ということを知ったのは最近になってからのことだ。

初めてゆっくりと誠品書店を散策してみたのだが、なるほど蔦屋書店が参考にしたというのがよくわかる。というより、知らなければ無邪気にも「蔦屋書店みたい」という感想を抱くだろう。雑誌のコーナーでは、日本語の雑誌が台湾の雑誌と一緒にそのままディスプレイ・販売されている。日本の雑誌の中国語(台湾)版もあるが、ファッション誌やグルメ誌などは、日本語そのままでも売れるらしい。台湾版であっても、日本語のひらがなの「の」はそのままのひらがなとして表紙のデザインなどでは残されていたりする。「の」を残すことで日本っぽさやおしゃれさを表現できるそうだ。角川書店は台湾に台湾角川という子会社があるので、現地でもウォーカーシリーズなどを積極的に展開している。英語版の雑誌ももちろん多数。

文房具のフロアでは、文具好きにはたまらない感じで、様々な文房具、紙製品が魅力的にディスプレイされている。へぇ~こんなのあるんだねぇと思いつつ手にとってみると意外と日本のものだったりすることもある。ディスプレイや組み合わせの工夫で商品の魅力を最大限に見せているのが素晴らしい。

誠品書店は、台北市内にいくつかあるので(誠品生活、という名前でより総合的なライフスタイルショップの形態をとっているところもある)、時間をとってぜひゆっくりと眺めてみるとよい2)。本好き、文房具好きには、とても楽しい時間になること請け合いである。

1 「Anjin」というカフェでは雑誌のバックナンバーが驚くほど豊富に備えられていて、パラパラとめくっているうちにあっという間に時間が過ぎる。
2 今年の9月27日には「コレド室町テラス」に「誠品生活日本橋」として日本初出店する予定のようだ。