夢伝説(スターダスト・レビュー)

「夢伝説」を聞くとカルピスが飲みたくなる中高年は少なくないのではないか。84年発売のこの曲はカルピスのコマーシャルに使われ、バンドとして全国的な人気を獲得する原動力となった。

スターダスト・レビューは81年デビュー。ボーカル&ギターの根本要を中心とした5人編成のバンドだが、全員がボーカルをとれるほどの高い歌唱力を活かした分厚いコーラスワークと洗練された曲調が魅力だ。根本の声がハスキーなので、ちょっと聴いただけだとわかりにくいが、男性ボーカルとしてはキーが非常に高く、一般人がカラオケで歌おうとすると愕然とする。全体的には、エレピ、シンセサウンドを中心としたキーボードが全面に出て曲の色を決めるタイプのバンドだが、カッティングと中間部のソロワークでは根本のギターがロック・ブルーズ色を加えて、単なるおしゃれポップとは一線を画する深みと複雑さを演出している1)。実際、根本はギターには並々ならぬ思い入れを持っているようで、以前読んだインタビューでは、「ボーカルは他人に譲ってもかまわないけれど、ギターだけは譲れない」という意味のことを話していた記憶がある。ブラウンサンバーストのストラトを愛用している。「夢伝説」もそうだが、イントロを省いてサビのメロディを冒頭に持ってくる曲が比較的多く2)、また、それがスタレビらしさをうまく演出している。

僕が熱心に聴いていた頃、キーボードは結成以来のメンバーである三谷泰弘が担当しており、アルバムでもライブでも彼がメインボーカルを担当する曲が取り上げられている。僕から見ると、根本と三谷はいい意味での「競合」関係があり3)、それがバンドの魅力のひとつを形作っていたと思う。94年にソロプロジェクトのために脱退してしまったのはとても残念だった。

ライブ版アルバムや映像を見るとわかるが、ライブでは、曲間のしゃべりも含め、笑いあり涙ありの、誰もが存分に楽しめるエンターテイメントに仕上げてられており、何度見ても楽しい。

1 「木蘭の涙」などが好例。
2 「木蘭の涙」「今夜だけきっと」「トワイライトアベニュー」など
3 オフコースにおける、小田和正と鈴木康博のような