Some Like It Hot (The Power Station)

この前友人と美男ミュージシャンの思い出話をしていたのだが、アメリカではあまり思い当たらないけれど、イギリスにはけっこういる1)。「イイ男」系バンドといえば、真っ先に浮かぶのはデュラン・デュランだ。80年代のおしゃれロック路線の先頭集団を走っていた印象があるが、ハードロック・ヘビメタ原理主義者だった若き日の僕は、MTVやベストヒットUSAでデュラン・デュランが出てくるたびに「ちっ」と舌打ちをしていたくらいで、彼らの音楽について語るべきなにかを持っていない。ジョン・テイラー(Bass)がオトコの自分から見てもカッコええなーと思っていたくらいである。

デュラン・デュランからジョン・テイラーとアンディ・テイラー(G)、そこにロバート・パーマー(Vo)、トニー・トンプソン(Dr)を加えてできたのが The Power Stationだった。デュラン・デュランよりずっとロックまたはファンク寄りの縦ノリビートとハードなカッティングギターで、「Some Like It Hot」とT-Rexのカバー「Get it On」の2曲がUSチャートでTop 10入りする。ロバート・パーマーも、イギリスのミュージシャンらしいちょっと屈折した雰囲気と中年のセクシーさを併せ持った色男だっただけに、見栄えのするフロントマン3人を擁するミュージックビデオはけっこうインパクトがあり、格好良かった。

デュラン・デュランではアンディ・テイラーのギターが前面に出ることはほとんどなかったけれど、The Power Stationではしっかりとしたギターサウンドと幅のあるプレイを聴かせてくれる。「Some Like It Hot」ではコンプレッションの効いた跳ねるような細かいカッティングとけっこう弾きまくりのソロを、「Get It On」では音圧のあるディストーションでどっしりと重いカッティングを聴かせてくれる。最初に聞いたときには、あ、こんなに弾ける人だったのね~、とちょっと驚いたくらいだ2)。デュラン・デュランでの鬱憤を晴らすようでなかなか痛快である。久しぶりに聴いたけれど、今でもこれはじゅうぶんにカッコいいと思う。今度バンドで演ってみたい。

1 ブ男もけっこういる。
2 当時、「Thunder」というソロアルバムも聴いてみた。The Power Stationよりも、さらにロック寄りのプレイは聴かせてくれたけれど、残念ながらあくまで「デュラン・デュラン」に比べればいい、くらいのインパクトで、ハードロックの凄腕ギタリスト達に伍するまではいかず、2、3回聴いただけでであとお蔵入りさせてしまった。