プログレ・ロックといえば、変拍子、転調の多用、長大な曲といった音楽的に「高度」なアプローチや、コンセプトアルバムに代表される物語性が頭に浮かぶ。ピンク・フロイド、キングクリムゾン、ジェネシスなどが代表例だと思うけれど、僕はそれぞれ一、二度聞き流した程度であまり好きではなかった。なんとなく大げさで、わけのわからない現代美術を見ているような気にさせられて、単純に楽しめなかったのだ。
クイーンズライク1)というバンドも、プログレ・メタルとして、名前くらいは知ってる、という程度だったが、ある時、ヘルプでギターを弾くことになった学園祭バンドで「Operation: Mindcrime」から4、5曲コピーすることになり2)、初めてアルバム一枚まるごと聴いてみてあらビックリ。なんせ、一曲目のインストから、拍子のアタマがわからない。食ってんの?食ってないの?3)変拍子?どこから?あれ、戻ってる?と、のっけから「?」だらけで途方に暮れる。これ無理!弾けない、というのも悔しくて、譜面とにらめっこしながら、何十回、何百回と聴いて練習した。これが面白いことに、なんとか弾けるようになる頃には、このアルバムの虜になっており、学園祭が終わった後も四六時中こればかり聴いていた。今でもたまにクルマの中で大音量で聴いている。かなり中毒性が高い。
「Operation: Mindcrime」は、クイーンズライク3枚目のアルバムで88年発売。壮大・緻密なコンセプト・アルバムとして、ヘヴィメタル史に残る名作。多くを作曲しているクリス・デガーモ(G)のセンスが素晴らしい。コード進行と、ジェフ・テイト(Vo)の常人離れした声域をフルに使ったメロディの美しさが際立っている。また、ロックらしいストレートなビートでありながら、変幻自在に変化するドラム+ベースのリズムの面白さは出色である。
「Eyes Of A Stranger」は、アルバムのラスト、つまり物語のラストを飾る、ミッドテンポの曲。トリッキーな変拍子はないけれど、緩・急、静・動が効いて実に格好良い。ライブだと、この曲がそのまま1曲目のインスト(Anarchy-X)4)に繋がって全体がループするように終わる構成になっていた。