枝豆が好きだ。茹でたものが盛られていると、なくなるまでずーっと食べている。止まらない。居酒屋で出てくるものは、冷凍ものが多くて、正直あまり美味しくないけれど、できれば枝付きのものを買ってきて自分で茹で、よい塩を振って食べるのは夏の楽しみである。
枝豆は大豆の若い姿である。これは意外に知られていないのではないか。青々とした夏の枝豆を収穫せずにそのまま畑で放っておくと、豆は熟してより大きくなる。葉が黄色く枯れ、さやと豆も黄色っぽく色づいてから収穫されるのが大豆。大豆はほとんどの場合、納豆とか煮豆とか豆腐とか、ある程度加工もしくは調理された姿で目の前に現れるのに対して、枝豆は収穫したそのままの姿、つまり毛深いさや入りの姿でスーパーに並んでいる。その違いもあって、枝豆と大豆を結びつけて見ることはあまりないのかもしれない。ついでに言うと、完熟した豆である大豆を暗いところで発芽させるともやしになる。枝豆、大豆、もやし1)は同じ植物の異なる成長段階なのだ。
大豆はコメと並んで和食の「要」といっていい。味噌、醤油、納豆、豆腐、油揚げ、もやし、枝豆。みな我々の食卓になくてはならないものだ。これに白米があれば、他に何もなくても立派な献立が成立する。さらに、これらはみな、驚くほど安価である。納豆、豆腐、もやしなんて百円玉ふたつで、たっぷり二人分かそれ以上を買うことができる。
これほど大豆を日常的に食べているわりに、食品用大豆の国産比率は、年間需要96万トンのうちの24万トンで25%くらいである2)。国産の大豆はほぼ全量が食品用で、残りはアメリカ、カナダ、ブラジルなどからの輸入でまかなわれている。国産大豆はおよそ半分が豆腐、あとは、納豆、煮豆総菜、味噌醤油などに使われる。
豆類は概して食物繊維が多く含まれており、腸内環境を健やかに保つために良い食品だが、大豆はさらに、その他の豆類(たとえば黒豆、えんどう豆、ヒヨコ豆等)に比べて、糖質が少ない。糖質を抑えつつ、タンパク質と食物繊維を摂るには理想的な食材だと言える。腸内細菌の本を読んで以来、この共生者の皆さんに多少気を使うようになったが、枝豆は彼らにもきっと喜んでもらえるであろう。夏ももう終盤。お店に並んでいるうちは、せっせと茹でて消費しようと思う。