RATT(ラット)は、80年代にロックシーンを席巻したいわゆる「LAメタル」の代表的バンド。「LAメタル」というのは、日本のメディアが便宜的に使った名称で、はっきりした定義があるわけでもない。ふわっとした括りでは、80年代に活躍した西海岸出身のHR/HMバンドで、MTV的に見栄えのする外見1)、わかりやすいメロディとヘヴィでテクニカルなギターが共通項だろう。ほかには、モトリー・クルー、クワイエット・ライオット、ドッケンなどをイメージするとわかりやすい。
ギタリストの立場からは、深く歪んだディストーションサウンド、高域と低域を強調したいわゆる「ドンシャリ」な音、技術的に難度の高い速弾きとフロイドローズのトレモロを使った派手なアーミングが特徴。リードギタリストはボーカルと並ぶバンドの顔で2)、ギターソロのない曲は考えられない。
RATTはロビン・クロスビー3)とウォーレン・デ・マルティーニによるツインギター。巨漢で横幅もあるロビンと、ほっそりとした色男のウォーレンというビジュアル上の対比は、音楽的な役割分担にも通じていて、時期によって濃淡はある4)けれど、ロビンがリズム、ウォーレンがリードをとる。
「レイ・イット・ダウン」(Lay It Down)は、85年発売の2枚目のアルバム「インヴェイジョン・オブ・ユア・プライヴァシー」(Invasion Of Your Privacy)の2曲めに収録されている。当時のバンド仲間、ギタリスト友達の中では、RATTで最も評価の高い、人気のある曲だったと思う。ウォーレンのギターが響いた瞬間に誰もがわかる特徴的なイントロ。ギターソロは、拍子のアタマでキッチリ入らずに、ちょっとズラして入るフレーズがちりばめられていて、スリリングで格好良い。バンドでプレイしたことはないけれど、当時よく家で練習してた。スティーブン・パーシーのボーカルは、まぁ、なんというか、もうちょっと何とかならんかと思うものの、これがRATTなのだと言われれば5)、仕方がない。それにしてもこのプロモビデオ、ひどすぎるな。