ワイングラスベイ(Wineglass Bay)は、ホバートから北におよそ200キロのフレシネ半島(Freycinet Peninsula)・フレシネ国立公園の大自然の中にある1)。緩やかに湾曲した美しい砂浜が、言われてみればワイングラスの曲線に似ている。ここに直接クルマで乗り入れることは出来ないため、山を越えた北側の駐車場にクルマを置き、ワイングラスベイ・トラックという遊歩道を歩いて湾に向かう。途中、ワイングラス・ルックアウトという見晴台までが3キロ、往復1時間から1時間半の道のり、その先を進んで湾にあるビーチまで行けば、トータル6キロ、2時間半から3時間といったところ。
日没までの時間と体力を鑑み2)、とりあえずワイングラス・ルックアウトまで行ってみることにする。ルックアウトは標高230メートル。230メートルと聞くと、たぶん少なからずの人は、はは、大したことねぇな、楽勝、と思うだろう。そう、僕も思った。230メートルと言うのは、高尾山の半分、東京のビルで言えば、六本木ヒルズの高さに相当する。で、水も持たずに気楽に歩き出したわけだ。でも、普段運動をしないおっさんにはそれほどイージーでもないし、水くらいは持ってくるべきだったと思い知らされることになる。さて、ここで問題。直角三角形の斜辺が1500メートル 高さが230メートル、角度θは何度でしょうか。
答えは8.8度3)。これを道路標識によくある「%表示」に直すとおよそ15%。斜度15%の坂道って、ロードバイクなら「激坂」って言う人もいるレベル。100メートル進むと15メートル上がる。これを1,500メートルずっと歩くわけですよ4)。何にせよ、問題は勾配であって、絶対的な高さではなかったのだね。これだから素人は困る、って言ってももう遅い。最初こそ余裕を見せていたものの、だんだん息が切れ、そのうち隙きあらば道端の巨岩やベンチにへたり込む始末。それでも何とか40分ほどかけて見晴台までたどり着いたところ、そこからの風景は、なるほど来た甲斐があったというものだ。オーストラリア政府観光局のウェブサイトによると、4日間のガイド付きウォークツアーや、クルーズ、フィッシングなどいろいろ楽しめるようだ。次回はぜひもっと時間をとって来ることにしよう。