2017年5月。オハイオ州にいる弟ファミリーを訪ねる用事があり、ついでに、フロリダまで足を伸ばしてみようと思いたった。地図を眺めてみると、フロリダ州は、アメリカを長方形とすれば右下の隅に位置する大きな半島で先端はキューバに近い。その半島の先に、抜き忘れた毛のように西に向かって小さな島々がひょろりと連なっている、その先端がキーウエスト。アメリカ本土最南端だ。キーウエストといえば、海の上をまっすぐ伸びていくハイウェイ、アメリカ最南端、常夏のマリンリゾート、ヘミングウェイ、といったキーワードが浮かぶ。5月末という時期も本格的な夏を迎える前でちょうどよさそうだ。うん、行ってみよう。
オーランドで数日過ごした後、キーウエストに向けてクルマで出発。予定走行距離620キロ。東京から西に向かえば岡山の手前、北に向かえば八戸の手前くらい距離だ。むむむ、そう考えると遠いな。それに海の上のハイウェイを走るのだから、景色を楽しめる時間に通過せねばならぬ。暗くなってから、みてごらんいま海の上だよー、と言っても冷たい沈黙が車内を支配するであろう。急ごう、急ごう。というわけでオーランドを早朝に発って一路南へ、フロリダターンパイクをひたすら南下する。フロリダターンパイクはマイアミ近郊とフロリダ州中央部および南部をつなぐ大動脈。道幅も広く快適なドライブを楽しめる。
途中、PGA本部1)のあるパームビーチガーデンズ(Palm Beach Gardens)を右手に見ながら進み、デルレイビーチ(Delray Beach)方面の看板を通り過ぎる。2007年に、当時18歳、ランキング244位の錦織圭が、アメリカプロツアーにおける衝撃的な初優勝を飾った場所だ。高級避寒地フォートローダーデール近郊をすぎると、道はマイアミ市内を避けるようにゆるやかに西に進路をとり更に南下する。お昼を過ぎたので、一般道に降りてマイアミ国際大学そばの中華料理屋でランチ。この大学も、アメリカの大学がほとんどそうであるように、キャンパスが広大で気持ちが良い。調べてみたところ、俳優のアンディ・ガルシアが卒業生だそうだ。彼もこの中華料理屋で大盛り天津丼を食べただろうか2)。
ホームステッド(Homestead)という町のはずれで道はインターステート1号線と合流。間もなくマイアミ半島を離れ、いよいよフロリダ・キーズ(Florida Keys)とよばれる小さな島々をつなぐ海上ハイウェイに入る。この1号線の最果てがキーウエストだ。