GIANTは87年結成のハードロックバンド。89年に「Last of the Runaways」、92年に「Time to Burn」というアルバムを発表しているが、日本での知名度はごくごく限られたものだと思う。人気セッションギタリストのダン・ハフが結成したバンドで、彼のギターがこのバンド最大の魅力だ。レコーディング・ミュージシャンとしては、ホイットニー・ヒューストン、マイケル・ジャクソンからケニー・ロジャース、ジョージ・ベンソン、エイミー・グラントまで、ジャンル横断的に幅広くプレイしており、その人気・実力のほどが伺える。ハードロックのジャンルでは、ホワイトスネイクのアメリカ版「Here I Go Again」のギターは彼が弾いている。
GIANTの曲では、ハードロックらしい、伸びのあるディストーションサウンドを基調としながらも、随所でスタジオマンらしい引き出しの広さを見せる。基本になるオーバードライブが美しく、音の分離がよい。歪みすぎてつぶれたりゴリゴリしたりせず、複雑なコードで音を重ねても濁って聞き取りにくくなるということがない。そこにクランチ(ごく軽くオーバードライブがかかる音)、クリーン(全く歪みのない音)が適材適所に使われて、硬軟取り混ぜた幅のあるプレイを聴かせてくれる。ピッキングの粒立ちのよさとリズムの良さも特筆すべきだろう。遅めのフレーズでも速弾きフレーズでも、音の一つ一つがくっきりと立ち上がり、すべての音符が明確な「意図」をもってプレイされているようで、惰性に流れた音がない。リズムも走ったりもたついたりせず、かといってメトロノームのように無機的なものでもなく、しっかりうねり(グルーヴ)をつくりだしている。こういった特長は、スティーブ・ルカサー、マイケル・ランドウにも共通していて、スタジオミュージシャンとしてやっていく上で欠くべからざる資質なのだと思う。
この「Stay」という曲でも、わずかにスライドさせているような出だしのリフがまず格好良い。ギターソロでは、冒頭部分のフロイドローズ・トレモロならではのニュアンスの付け方や、左手のスライド、後半部分の速弾きフレーズなどハードロックギターのお手本のようなテクニックを使いながらスケールの大きなソロに仕上げている。(ビデオは80年代MTVによくあったヘンなつくりで、今見るとちょっと滑稽だ。本人はPRSのギターを抱えているが、たぶん見栄えのために撮影用に持たされただけではないかと思う。)
GIANTは、このあと2枚アルバムが出ているけれど、バンドとしては成功していない。ダン・ハフ自身がボーカルも兼任しているけれど、やはりボーカリスト専任で尖った特徴のあるメンバーを別に入れるべきだったように思う。きっと本人が歌にも自信があり、かつ、やりたかったのだろうと思うけれど、バンドというよりはセッションギタリストのソロアルバムの域にとどまってしまい、期待をいい意味で裏切るようなものにはならなかった。
2000年代以降は、すっかりカントリー・ミュージックに軸足を移してしまい、ロックの世界では、ギタリストとしてもあまり名前も見なくなってしまった。でも、Youtubeを見ていると、最近でもGIANTとしてたまにライブもしているようなので、ロックの世界でも、また格好いいギターを聴かせてほしいと願っている。