Key West 旅行記 3 – ゼロマイル地点とSouthernmost Point

アメリカの国道1号線(US Route 1)は、東海岸を南北に貫く最も長い国道で、およそ3,850キロに及び、マイアミ、ワシントンDC、ニューヨーク、ボストンといった東海岸の主要都市を結ぶ大動脈である。ちなみに、北海道稚内から鹿児島市までクルマで走ると2,700キロ前後だから、それより1,000キロも長いわけだ。アメリカは広い。この1号線の南端がキーウエスト市内にある1)。繁華街から外れた、何の変哲もない街中の一角に標識が建っている。北向きには「BEGIN」、南向きには「END」の標識。日本だと道の駅でもつくって物販に励みそうなものだが、こちらはあっさりしたもので、END OF THE ROADという名のこじんまりしたお土産屋さんがあるきりだ。

キーウエストにはもうひとつ「端っこ」記念のモニュメントがある。アメリカ本土2)最南端を示す、Southernmost Pointだ。South Street と Whitehead Streetが交差する海際に、コンクリート製のブイがある3)。このブイは比較的新しくて、1983年に観光目的で建てられたものらしい。実は、近くにあるフォート・ザカリー・テイラー・ヒストリック州立公園(Fort Zachary Taylor Historic State Park)のビーチが、このブイより150メートルほど更に南だったりするが、そのあたりはまぁいいじゃないの、ということで、南国らしくおおらかでよろしい。ブイには、ここからキューバまで90マイル、とある。

1 北端はカナダ国境の町メイン州フォートケント(Fort Kent)。
2 本土というか、キーウエストも島なので、本土から橋などが架かっていて、陸続きで行ける場所の中で、という意味ですね。
3 ブイの写真はここに載せられるものがないので、こちらをどうぞ。

Key West 旅行記 2 – 海上ハイウェイとセブンマイルブリッジ

seven mile bridgeマナティ湾を過ぎると1号線はキー・ラーゴ(Key Largo)に接続する。ここからフロリダ・キーズの島々を結ぶおよそ180キロが海上ハイウェイ(Overseas Highway)だ。もともとは鉄道が走っていたが、1935年のハリケーンで破壊されて廃線となったあと、用地と残った橋がフロリダ州に売却された。1940年代から旧道路からの付け替え、拡幅、現代的な橋へ架け替える工事などを経て1980年代にほぼ現在の姿になった。

ところでフロリダ・キーズ(Florida Keys)の keysは「島」を意味しているが、もともとは「小さな島」を表すスペイン語 cayo から転じた1)。島が「鍵」みたいに見えた、みたいな言い伝えがあるわけではなさそうである。島と島の間では海の上にハイウェイが伸び視界がぱっと開ける。大きめの島に入ると海は見えなくなり、両側にはスーパーやガソリンスタンド、レストランやマリンスポーツの店が点々と並び、どちらかと言えば退屈な風景がしばらく続く。それを交互に繰り返しつつ、クルマは順調に進む。

seven mile bridge
青い海と空を分けるようにまっすぐに橋が伸びる

海上ハイウェイのハイライトとも言えるセブンマイルブリッジは、ナイツ・キー(Knight’s Key)とリトル・ダック・キー(Little Duck Key)を結ぶ6.79マイル(10.93キロ)の橋だ。キー・ラーゴで海上ハイウェイに入ってから約60マイル、マラソン市(Marathon)を抜けたところに現れる。ゆりやかな上りと下りが連続し、真っ直ぐに海の彼方に伸びてゆく橋、左右は見渡す限りの海。噂に違わぬ絶景だ。もし可能ならオープンカーで幌を全開にして走りたい2)。世代によっては、鈴木英人やわたせせいぞうのイラスト3)をイメージするかもしれない。橋の終わりに、駐車場と公園があって、今走ってきた橋をクルマを降りてゆっくりと眺めることができる。

 

1 アメリカ人にとってもKeyが島を表すのは、耳慣れない用法のようである。どこかの質問サイトに「なぜFlorida Isles と言わないのか」という質問があった。
2 残念ながら僕はルーフも開かないミニバンだった。
3 二人ともフロリダをテーマにしたイラストはあるようだが、セブンマイルブリッジそのものを描いたものがあるかどうかは知らない。

Key West 旅行記 1 – Key Westへ

Sunset beach

2017年5月。オハイオ州にいる弟ファミリーを訪ねる用事があり、ついでに、フロリダまで足を伸ばしてみようと思いたった。地図を眺めてみると、フロリダ州は、アメリカを長方形とすれば右下の隅に位置する大きな半島で先端はキューバに近い。その半島の先に、抜き忘れた毛のように西に向かって小さな島々がひょろりと連なっている、その先端がキーウエスト。アメリカ本土最南端だ。キーウエストといえば、海の上をまっすぐ伸びていくハイウェイ、アメリカ最南端、常夏のマリンリゾート、ヘミングウェイ、といったキーワードが浮かぶ。5月末という時期も本格的な夏を迎える前でちょうどよさそうだ。うん、行ってみよう。

オーランドで数日過ごした後、キーウエストに向けてクルマで出発。予定走行距離620キロ。東京から西に向かえば岡山の手前、北に向かえば八戸の手前くらい距離だ。むむむ、そう考えると遠いな。それに海の上のハイウェイを走るのだから、景色を楽しめる時間に通過せねばならぬ。暗くなってから、みてごらんいま海の上だよー、と言っても冷たい沈黙が車内を支配するであろう。急ごう、急ごう。というわけでオーランドを早朝に発って一路南へ、フロリダターンパイクをひたすら南下する。フロリダターンパイクはマイアミ近郊とフロリダ州中央部および南部をつなぐ大動脈。道幅も広く快適なドライブを楽しめる。

途中、PGA本部1)のあるパームビーチガーデンズ(Palm Beach Gardens)を右手に見ながら進み、デルレイビーチ(Delray Beach)方面の看板を通り過ぎる。2007年に、当時18歳、ランキング244位の錦織圭が、アメリカプロツアーにおける衝撃的な初優勝を飾った場所だ。高級避寒地フォートローダーデール近郊をすぎると、道はマイアミ市内を避けるようにゆるやかに西に進路をとり更に南下する。お昼を過ぎたので、一般道に降りてマイアミ国際大学そばの中華料理屋でランチ。この大学も、アメリカの大学がほとんどそうであるように、キャンパスが広大で気持ちが良い。調べてみたところ、俳優のアンディ・ガルシアが卒業生だそうだ。彼もこの中華料理屋で大盛り天津丼を食べただろうか2)

ホームステッド(Homestead)という町のはずれで道はインターステート1号線と合流。間もなくマイアミ半島を離れ、いよいよフロリダ・キーズ(Florida Keys)とよばれる小さな島々をつなぐ海上ハイウェイに入る。この1号線の最果てがキーウエストだ。

1 ゴルフをする人にはおなじみ。
2 たぶん食べてない。