南三陸・女川旅行記(1)

1. 南三陸町

大学生の姪二人がそれぞれ南三陸町と女川町でこの夏インターンをしている。メールやチャットで時折、仕事や町の様子を知らせてくれるのだが、これがとても興味深い。インターンの仕事内容もさることながら、町での生活の様子が楽しそうなのだ。どちらの町も海の幸が豊富な港町で、牡蠣、ほや、たこ、さば、鮭、うにといった名物がずらりと並ぶ。これは二人が現地にいる間にぜひ案内してもらって、美味しいものを食べたい。

南三陸町は仙台から北東方向の太平洋岸、石巻と気仙沼のほぼ中間にある。志津川湾に臨む港町だ1)。首都圏から行く場合には、仙台まで新幹線、そこからクルマを借りて三陸自動車道経由で行くのがよいだろう。仙台からはおよそ90キロ、道中ほとんどが高速道路なので、1時間半から2時間弱の快適なドライブである。

2. 南三陸さんさん商店街

オクトパスくんがマスコット。

南三陸町の観光の中心は、「南三陸さんさん商店街」だ。2012年に仮設商店街としてオープンし、昨年2017年3月3日に、現在の場所(国道45号線と八幡川の間、志津川湾を一望する場所)に本設が完成。隈研吾監修のもと設計されたそうで、誰でも利用できるテーブルと椅子が広々と設置された「さんさんコート」を中心にして、その両側に山側と海側をつなぐように店舗が並ぶ。見通しのよい開放的な商店街で、天気の良い日には、周囲の飲食店からテイクアウトしたものを「さんさんコート」で食べるのも楽しい。

今回の一番のお目当ては「キラキラ秋旨丼」。これは南三陸産の海産物をたっぷり乗せたご当地ブランド「キラキラ丼」の秋バージョン。9月・10月の二ヶ月、町内十数店舗で食べることができる。みな「キラキラ丼」と名がついていても、その中身はお店ごとに違う。それぞれ工夫をこらして特長をだしているので、食べ比べを楽しむこともできる。今回は姪っ子のアドバイスに従い、弁慶鮨の秋旨丼を攻略しようと、11時開店前にお店に並んだ。ドンブリくらいで並ぶなど何をおおげさな、と思うかもしれぬが、週末のお昼時はどこも長蛇の列になるというインサイダー(姪っ子)情報を事前に得ていたのだ。ぬふふ、用意周到とはことことだ。兼好法師も「少しのことにも先達はあらまほしきことなり」と申されている。

いざ席についてメニューをしげしげと眺めたところ、弁慶鮨の秋旨丼は、だしの効いた炊き込みご飯に、鮭といくらがこれでもかと乗った「はらこめし」で実に美味そうだ。が、しかし。うに、えび、ほたて、いくら、しゃけをはじめとする海鮮オールスターが乗った「海鮮丼」も捨てがたい。20秒ほど熟考熟慮の末、当初のお目当てから乗り換え、海鮮丼を注文した。だってメニューに「迷ったらこれ」って書いてあるのだもの。メニューの文句にうそいつわりはなく、海鮮丼は豊潤で端正で文句のつけようのない美味しさだった2)

さんさん商店街には、ほかにも素敵なものがたくさんある。ひとやすみしたい時には、「オーイング菓子工房 Ryo」の焼きたて「お山のマドレーヌ」と「NEWS STAND SATAKE」でハンドドリップの自家焙煎珈琲を。「ヤマウチ」の鮭の白子や牡蠣の燻製は、お土産にも宿に戻ってからの酒のつまみにも良い。

南三陸・女川旅行記(2)に続く。

1 改めて言うまでもないが、2011年3月11日の大地震では震度6弱を記録するとともに、10メートルを超える津波が襲い壊滅的な被害を受けた。
2 同行者が注文した秋旨丼を味見させてもらったところ、甲乙つけがたく美味しかった。