技巧派ギター二人のツインリードは珍しくないが、ギターとベースによるツインリードと呼べるのはこのバンドくらいだろう。ビリー・シーン(B)とポール・ギルバート(G)の組み合わせは圧巻のロックンロール・サーカス。スリリングな掛け合いとハーモニープレイ、まさにギターとベースによる正確無比な速弾きツインリードは、ビジュアル的な見せ方もしっかり心得ていて、観客を飽きさせない。
ポール・ギルバートは、演奏技術的にはなんでもハイレベルにこなすオールラウンドプレイヤーで、リフも切れ味鋭くリズムも正確。HR/HM、ブルーズ、フュージョンまで幅広くこなすセンスも備えている。音が硬質で色気に若干欠けるところは好き嫌いが別れるかもしれない。左手の運指を見ていると、薬指の動き1)が常人離れしている。
ビリー・シーンは、ギター顔負けの速弾きやライトハンドで、ロックベースの概念を変えたベーシストと言えるだろう。バンドのボトムを支えグルーヴを出す役割はしっかりと固めつつ、ここぞというときにアクロバティックなプレイが飛び出す2)。右手は、人差し指、中指に加えて薬指も使った3フィンガー。通常ロックは2の倍数で割り切れる譜割りが圧倒的に多いが、そこを3で割ってプレイしつつ、あの速弾きもこなす。
エリック・マーティンのボーカルは、HR/HMというよりは、もう少しポップス(あるいはR&B)寄りのテイスト3)で、バンド全体の空気を馴染みやすいソウルフルなものにまとめている。
ドラムのパット・トーピーは、繊細で効果的なハイハットワークにコンパクトで切れの良いドラミングでバンドの疾走感を担ってきた。GとBが派手なのであまり目立たないけれどかなりのテクニシャンだと思う。2012年にパーキンソン病を発病、治療を続けながら、サポートドラマーとともにバンドのツアーに帯同していたが、昨日、パーキンソン病による合併症で亡くなったというニュースが飛び込んできた。インタビュー記事やビデオでの優しい笑顔と穏やかな話しぶりが印象に残っている。ご冥福をお祈りします。