ホバート旅行記 2 空港からホテルへ

 タスマニア入りにはいくつかルートがあるが、今回はメルボルン経由でホバート (Hobart) に入る。ホバートはタスマニア州の州都であり最大の都市だ。最大といっても近郊も含めたエリアの人口は20万人ほど。タスマニア州は全体の人口でも50万人しかいないので、およそ半分がホバートに住んでいることになる。ちなみにメルボルンとシドニーがともに人口500万人くらいだから、タスマニアがいかにこじんまりした州なのかがわかる。日本で同じくらいの規模の市といえば島根県の松江市、東京でいえば台東区が該当する。

AIR 吉野家
空の上でもおなじみのオレンジ

 10月20日午前11時発の日本航空JL773便で成田を発ちメルボルンに向かう。飛行時間はおよそ10時間。日本発のJALは機内食に「吉野家」が出る。これが意外と美味しい。持ち込んだタブレットでジェイソン・ボーンのシリーズを立て続けに見て時間をやり過ごす。アルティメイタムが一番いいな。メルボルンと東京は時差が2時間1)あるので、メルボルン到着は夜11時。空港近くのホテルで一泊して、翌21日の12時40分発のカンタス航空QF1503便でホバートまで1時間15分。

 南半球のオーストラリアは初夏。ホバート空港は小さな空港だが木々や芝生の緑が鮮やかだ。飛行機を出るとタラップを降り滑走路脇を歩いてターミナルに向かい預け入れた荷物を受取る。空港で手配していたレンタカーに荷物を積み込み、いざ出発。オーストラリアは日本と同じく左側通行なので運転がラクだ。

Qantas Link
Qantas Linkというシャトル便。座席配置は3列-2列

 空港パーキングを出てA3号線・タスマンハイウェイに乗る。空港からホバート市内まではおよそ30分。タスマンブリッジ (Tasman Bridge) を渡ると長い坂道の先にホバートの港とダウンタウンの街並みが見えてくる。オフィスが集まる一角を抜け、波止場沿いの道を走ってバッテリーポイント (Battery Point) へ。バッテリーポイントは、19世紀にホバートが開かれた当初から入植者が住んだエリアで、今では港を望む高級住宅地だ。ところどころに古いビクトリア様式の邸宅が建っている。どの家もよく丹精された庭があり、春の花を咲かせた庭木が美しい。

1 オーストラリアが夏時間 (Daylight Saving Time) の場合。

ホバート旅行記 1 タスマニアへ

タスマニアの位置

 タスマニアはオーストラリアの南東の端っこにぶら下がるように位置する島である。日本で地図を眺めているときはそれほど大きくは見えない。2,3日もあればクルマで一周できるんじゃないかくらいの感じだ。でも実際には北海道の8割ほどの大きさだからかなり大きな島だ。

 多くの日本人にとってタスマニアといえば、タスマニアンデビルという恐ろしげな名前の動物のイメージだろう。世代によっては「タスマニア物語」という映画を思い浮かべるかもしれない。田中邦衛と薬師丸ひろ子が出ていた1990年の映画だ1)

 僕も旅行に行こうと思い立つまでタスマニアのことなど何一つ知らなかった。パタゴニアと混同していたくらいだ。(カタカナ5文字と南半球くらいの共通点しかない。)2017年秋のある日、日比谷線六本木駅に続く地下道で、「JALメルボルン線開設」と阿部寛がにっこり微笑む大きな広告ボードをたまたま目にしたのをきっかけに、そうだ、メルボルン行こう、と思い立った。そうだ、京都行こう、みたいなノリで。地図でメルボルンを眺めてみると、タスマニア島がいやでも目に入る。ほう、タスマニアね。面白そうだからちょっと足でも伸ばしてみるかな。

 調べてみるといろいろと面白い島だということがわかってくる。中でも興味深いのは、タスマニアでは近年ウィスキーづくりが盛んで、それもシングルモルトウィスキーを作っているということだ。シングルモルトウィスキーといえばスコットランドあるいは日本というのが定番で、オーストラリアのウィスキーなんて寡聞にして聞いたことがない。でも、2014年にタスマニアのSullivans CoveというウィスキーがWorld Whiskies Awards (WWA) のシングルモルト部門で最高賞を受賞している2)。ウィスキーブームに乗って世界的にも人気が高まっているが、各蒸溜所とも生産量が限られていて現地以外ではなかなか手に入らないらしい。うむ、これはウィスキー好きとして行かねばなるまい。

 

1 主人公が一流企業を辞めて絶滅したタスマニアンタイガーを探しに行くという陳腐な話らしい。制作はフジテレビ。
2 同年のブレンデッドモルトウィスキー部門ではニッカ「竹鶴」17年が最高賞である。