Kombuchaは、その音から我々が即座に頭に思い浮かべるところの昆布茶ではない。アメリカで人気の健康飲料のことで、その正体はいわゆる「紅茶キノコ」だそうだ。
「紅茶キノコ」というのは、紅茶(または緑茶)にゲル状になった酢酸菌や酵母のかたまりを入れて発酵させたものらしい。今50歳代より上の人は、子供の頃に「紅茶キノコ」というのものを見聞きしたことがたぶんあるはずだ。僕も、梅酒をつけるような広口の瓶の中に、どろどろとした怪しげな塊の浮かんだ赤い液体が入っている様子を見た記憶がある。体に良いという触れ込みで近所の人が作っていて、飲みなさいと勧められたのだが、そのときは全力で逃げた。
もちろん当時はその正体など知る由もなかったが、まぁ要は発酵飲料である。いわゆる腸内細菌叢の多様化というか、バランスを取るのに何らかの寄与をするのかもしれないが、なにせ見た目がとても人間の飲んで良いものには見えない。おおかたの健康食品の例に漏れず1、2年の一過性ブームに終わり、今日に至るまで日本では復活の兆しはない。
アメリカではここ5、6年人気だというが、僕は去年になって初めて遭遇した。シリコンバレーにある仕事先の会社の冷蔵庫に、缶入りのKonbuchaが入っていたのだ。「Asian Pear & Ginger Kombucha」という文字が爽やかな緑色でプリントしてあるので、てっきり清涼飲料的にアメリカンにアレンジされた昆布茶なのだと勘違いしてグビリと飲んだところ、鼻から吹き出しそうになった。端的に言ってたいへん不味い。こんなものをほんとうにアメリカ人が飲んでいるのだろうか?でも、ホールフーズの店舗に「Konbucha On Tap」などというコーナーがあるということは、グビグビと飲んでいる人が少なからずいるということであろうなぁ。