日本には111の活火山があり1)、この数は世界のおよそ1割に当たるらしい2)。おかげで地震や噴火は日常茶飯事とも言える国土だけれど、その代わりに、世界に冠たる温泉大国でもある。秘境の野趣溢れるところから、公営の銭湯、あるいは超がつくほどの高級宿まで好みと予算に応じて選び放題。なかでも、源泉かけ流し、と言われる、お湯を施設内で循環させず、加水もせずに供給するところは、「上質」な泉質が期待できるとあって人気である。
ところで、温泉の湯温、熱すぎるところが多くないか?日本人には42度が適温、とされているらしいが、一体誰が決めたのか。源泉かけ流しを謳うところは、熱めの湯が多い気がする。僕には40度から40.5度が極楽、頑張って41度が限界なのである3)。熱めの湯でも、いつも頑張って入ろうと努力はしている。そろりそろりと膝から下までは何とかなるが、尻を浸ける段になると、どぅわ!と意味不明の叫び声をあげて、毎度毎度、浴槽を飛び出すことになる。尻のあたりがとくに敏感なのだ。猫舌ならぬ猫尻である。
繊細な尻をもつ私には信じられないことに、43度とかそれ以上を好むあつ湯好きという人種がいて、こちらが入れないほどの湯でもまだぬるい、と不満げである。こういう輩が気持ちよさそうに入っているときは、心のなかで「煮えてしまえ」と呪いをかけるが、まったく効果はない。タンパク質が変性してローストビーフとか温泉卵みたいにならないかと密かに期待するが、多少赤くなる程度で、やつらは鼻歌などうたいながらご機嫌である。
というわけで、この週末に行った温泉でも、名物らしき「星空の見える露天風呂」には熱すぎて入ることができず、悔しいので湯に入らずに星を眺めていたら、風邪をひきました。
でも伊豆はもうすっかり春。



フェリーを降りて10分か15分、グレート湾(Great Bay)に沿って走り始めたら、



答えは8.8度
マナティ湾を過ぎると1号線はキー・ラーゴ(Key Largo)に接続する。ここからフロリダ・キーズの島々を結ぶおよそ180キロが海上ハイウェイ(Overseas Highway)だ。もともとは鉄道が走っていたが、1935年のハリケーンで破壊されて廃線となったあと、用地と残った橋がフロリダ州に売却された。1940年代から旧道路からの付け替え、拡幅、現代的な橋へ架け替える工事などを経て1980年代にほぼ現在の姿になった。

オーランドで数日過ごした後、キーウエストに向けてクルマで出発。予定走行距離620キロ。東京から西に向かえば岡山の手前、北に向かえば八戸の手前くらい距離だ。むむむ、そう考えると遠いな。それに海の上のハイウェイを走るのだから、景色を楽しめる時間に通過せねばならぬ。暗くなってから、みてごらんいま海の上だよー、と言っても冷たい沈黙が車内を支配するであろう。急ごう、急ごう。というわけでオーランドを早朝に発って一路南へ、フロリダターンパイクをひたすら南下する。フロリダターンパイクはマイアミ近郊とフロリダ州中央部および南部をつなぐ大動脈。道幅も広く快適なドライブを楽しめる。



タスマンハイウェイをB31出口で出て、ケンブリッジロードをハイウェイ沿いに少し戻るように走ると左手に看板が見えてくる。ラークに比べれば大きいとはいえ、それでも小さな蒸留所だ。ビル・ラークが何かのインタビューで、蒸留所見学に来る人は、森と清流の中にあるロマンチックな蒸留所をイメージして来る人が多いけれど、タスマニアの蒸留所はどちらかというとみんなただの工場(こうば)みたいなとこだよ、と笑っていたが、まさにそのとおりの場所である。



彼の蒸留所


