ジ・アッタ・テラス(沖縄)

8月の終わりに沖縄に行ってきた。ずいぶん久しぶりの沖縄だ。たぶん震災の年以来だろう。今回泊まったのはジ・アッタテラス・クラブタワーズ。沖縄に展開するテラスホテルズでは、ザ・ブセナテラスが有名だが、それに比べるとずいぶんこじんまりとした、静かな大人向けのホテルである。東西に伸びる沖縄本島の真ん中北側のあたり、恩納村の森に囲まれた丘の上に建っている。ゴルフ場を併設していて、雰囲気やしつらえが大人向けというだけでなく、16歳以上じゃないと宿泊できない文字通り「大人の」ホテルである。

那覇空港からはレンタカーで約1時間。フロントのある建物に入るとすぐにプール、そしてその向こうに海が見渡せる。海側の端から水が流れ落ちて境界線を意識させない「インフィニティプール」のつくりになっていて、森を越えた先に見える海にそのままつながっているように見える。海と空が青々と輝く朝と、夕日に赤く染まる日暮れ時はとくに見事だ。

宿泊棟はリゾートマンション風のつくりのクラブタワーで、プールから急な坂道を下ったところに二棟並んで建っている、。全室がスイート形式で、部屋も広々としてゆっくりとくつろげる。オーシャンビューの部屋ならベランダから森の向こうに広がる岬と海の雄大な景色を楽しめる。敷地内にはホテルで使われる食材を無農薬で栽培する自家農園や森をうまく利用した高低差のある広々とした庭園も眼下に見える。ホテルが高台に位置しているため、敷地内にビーチはないが、森を抜けた先にはビーチとビーチクラブがあり、電気自動車で送迎してくれるという1)

季節のせいか、蝶が多い。手のひらくらいの大きな黒いアゲハチョウが、亜熱帯の花の周りをひらひらと舞っている。プールも館内もとにかく静かだ。森の中から聞こえるセミらしき虫の合唱と、ときおり軽やかに響く鳥の鳴き声以外にはほとんど物音がしない。芭蕉がもし来ていたら、きっとここでも「静かさや…」と一句詠んだに違いない。それにしても、子供がいないというのがこれほど静かなものなのかと驚く。「大人の隠れ家」という触れ込みは決してダテではなかった。四日間の滞在中に一度、ブセナテラスのビーチとプールに遊びに行ったが、そこらじゅうで子供の甲高い声と親の大声がわんわんと響いていて、アッタテラスに比べると、幼稚園の真っ只中に放り込まれたかのようだった。(もちろん活気という点で子供が楽しそうにしているのを眺めるのも決して悪くはないのだが。)

これだけ静かだと、日頃の忙しない生活からくるストレスを解消するにはたいへんよろしい。とくにひとりで時間をすごすことが苦にならないタイプの人に向いている。昼はプールで体を冷やしつつプールサイドでのんびり読書と昼寝、夜はバーでテラスホテルズが自前で造っているクラフトビールなど飲みつつ、夜空の満点の星空を見上げて宇宙の彼方に思いを馳せる、などしているうち、あっというまに時間が経つ。スパのマッサージも高品質でオススメだし、ゴルフをする人はもちろんラウンドするのも楽しみつつ、4、5泊するのも良いのではないか。ただし、連泊するならレンタカーは必須。ホテルにはレストランがひとつしかなく2)、歩いていける範囲にも何もないので、庶民派(沖縄)料理店に行く場合にはクルマで15分から20分ほどの名護近辺まで出る必要がある。

1 ただし、遊泳はできないそうだ。海に入れるビーチで遊びたい場合には、ブセナテラスのプライベートビーチを利用できる。無料送迎バスで20分くらい。
2 併設のゴルフクラブ内にあと2つあるが。