Photograph (Nickelback)

ニッケルバックはカナダのバンドで、95年にチャド・クルーガー、マイク・クルーガー、ライアン・ピークの3人を中心に活動開始。99年にメジャーデビュー後、全世界で5,000万枚以上のアルバムセールスを誇る人気バンドではあるが、日本での人気はまだそれに見合ったスケールには達していないと思う。今年(2018年)のサマソニに出演したし、来年2月には久しぶりの単独来日公演も決まったようなので、遅ればせながら、ここに来て人気が盛り上がりつつあるのかもしれない。

「Photograph」は2005年の曲。僕が聞き始めたのもこの曲がきっかけで、チャドの野太いボーカル1)と美しいメロディが強く印象に残った。ポスト・グランジ、あるいはオルタナティブロックにカテゴリーされることが多いけれど、そこまでゴリゴリとエッジの立った、あるいは、荒削りなテイストではなく、叙情的ともいえる美しいサビのメロディとコーラスは誰にとっても聴きやすいロックだと思う。アメリカで言えば、むしろJourneyとかBon Joviに近いのではないか。とはいえ、グランジやオルタナティブに思い入れを持つ人には、その「わかりやすさ」が過剰な「売れ線」狙いに見えるようで、大量のアンチを生み出している2)のに加え、チャドが「炎上上等」的なコミュニケーションでそこで火に油を注ぐのも、もはやこのバンドの特色とさえいえる。

「売れ線」と言われようが、メロディの美しさとボーカルの力強さ、コーラスの美しさはこのバンド最大の魅力だろう。バンドサウンドはタイトで引き締まった音作りをしており、ギターもがっつり太いディストーションサウンドとアコースティックをうまく組み合わせている。でも、ギターソロやスリリングな掛け合いはほとんどないに等しく、80年代のハードロックファンとしては、そこがどうしても物足りない点であり、今ひとつのめりこめない原因でもある。

1 発声の仕方が、爆風スランプのサンプラザ中野にちょっと似てる。よくこの声の出し方で潰れないなと感心する。
2 Barksの記事によると、カナダの地方警察署が2016年のクリスマスに、「飲酒運転で捕まえたらバツとして刑務所に向かうクルマの中でニッケルバックを聴かせる」とFacebookに書き込んだりしたらしい。