捨てたもの記録:老眼鏡

子供の頃から視力は抜群で、40になるくらいまでは健康診断でも2.0を維持していたような記憶がある。近くも遠くも、ものを見るのに苦労しないどころか、およそどんなものも常にくっきりはっきり見えていた。ところが、41、2になって、近くのものが見えにくくなり、ときおり目がかすむようになってきた。PCの使いすぎから来る眼精疲労による頭痛や肩こりもひどかったので、眼科に行ってみたところ「立派な老眼です」と、おごそかにご託宣を賜ったのであった。

この赤みがかったフレームの老眼鏡は2本めに購入したもの。1本目ははじめてのメガネ、ということでちょっと奮発して高価なものを買ったため、もう少し安価な、会社のデスクに置きっぱなしにしておけるものを、と量販店で購入した。ところがこれがぜんぜんダメで、くっきり見えるわけでもなく、文字は歪むし頭痛はするしでほとんど出番がない。最初に買った方ばかりを使い、こちらは長いことメガネ立ての中に放置されていたのだが、今回処分することにした。

子供の頃、祖母や親戚の家の小物置き場に、同じようなメガネがいくつも置いてあるのをみて、メガネなんて一本あれば十分やんと不思議に思っていた。あほちゃうか、とまで思っていた。今、気がつくと自分のデスクの小物入れに3本ほど老眼鏡が立っている。メガネというのは、けっこう微妙な調整が必要なシロモノで、ぴったり合うものを作るのが意外と難しいこと、さらに目の方の状態が年とともに変化して、ときどき作り直す必要が出てくることなど、子供の頃にはまったく想像すらできなかった。若さと健康は、しばしばとても傲慢なのだ。当時の自分に、おまえもそのうち何本もメガネ買うんやで、と教えてやりたい。