古河花火大会

夏になると、日本全国で300以上の花火大会が開かれるが、3尺玉の花火を打ち上げるのは、実は数えるほどしかない。3尺玉というのは、重さ300キロ・直径90センチの玉で、600メートル上空まで打ち上げられ、直径650メートルの巨大な花を開かせる。打ち上げるために、広大なスペースが必要なため、都内では場所がないそうだ。

古河の花火大会は毎年8月の最初の土曜日に開かれる。広大な渡良瀬遊水地に面しているので、打ち上げ会場には困らない。今年は8月4日の土曜日に開催され、3尺玉2発を含む2万発が打ち上げられた。全国でも最大規模の花火大会のひとつだ。河川敷に座って夜空を見上げるのもよいが、去年と今年は父が住む駅前のマンションのベランダから見物した。最上階の7階で遊水地側に眺望が開けて見晴らしが良い。少し距離はあるけれど特等席なのだ。

3尺玉はクライマックスで打ち上げられる。玉は黄色い光の尾を曳きながらどこまでも上がっていき、他の花火よりひときわ高い位置から、無数の黄金色の糸が傘のように広がって、光の航跡を天空いっぱいに広げ、ゆっくりと落ちてくる。光から少し遅れて、ズンという地響きのような、他の花火とは異質な野太い音が腹に響く。

3尺玉以外の花火も素晴らしい。およそ1時間に渡って様々な花火が次々と打ち上げられる。花火の世界も技術革新が進んでいるようで、大きさだけでなく、以前はあまり見ることのなかった透明感のある青い光のもの、開いた球の円周上を衛生のように色とりどりの光が走るもの、天空に小さな花びらが一面に散るように開くものなど、毎年新しい趣向が凝らされている。まさに天空のスペクタクルで、時間があっという間に過ぎてゆく。

花火大会の費用がどれくらいなのかわからないが、きっと数万人(あるいはもっと多く)の人が夜空を見上げ、歓声を上げ、夏の風情を感じ、綺麗だね楽しいねと家族や友達と頷きあい、素敵な夏の思い出をつくったことだろう。そう考えれば、数億円かかったとしても、最高のカネの使い方だと思う。