花や草木を見ても、綺麗だなぁとか青々としているなぁ、といった漠然とした感想以上のものが出てこない。いい歳をしてそれでいいのか、と反省するが、どうにも興味を惹かれない。ところが、「毒のある植物」となると、がぜん前のめりになる。どういうわけか「毒」には禍々しい魅力がある。こわい、でも、見てみたい — まるで小学生のメンタリティだが仕方がない。
先日、小平市にある東京薬用植物園を訪ねる機会があった。観賞用というよりは、漢方薬の原料や民間療法で利用されてきたもの、染料などに利用されてきたものといった、実利用されてきた植物を主に栽培・研究している施設である。ここに「毒のある植物」ばかりを集めた区画があり、気がつくと一時間以上熱心に見入ってしまった。
意外なことに植物の毒は身の回りいたるところにある。植物園でもらったパンフレットによると、過去10年の食中毒例では、患者数の上位から、ジャガイモ、スイセン、クワズイモ、バイケイソウ、チョウセンアサガオ、と続く。このうち、スイセンはニラと、バイケイソウはオオバギボウシやギョウジャニンニクと、クワズイモはサトイモと、チョウセンアサガオはゴボウ、オクラ、ルッコラ、ゴマと間違えて食べてしまい、食中毒を起こしている。おもしろいのはジャガイモで、芽や緑色の皮にソラニンという有毒物質を多く含み、家庭菜園や学校菜園で未熟なジャガイモを収穫して料理したことから食中毒が起こる例が見られるそうだ。ありふれた園芸品種であっても油断してはいけない。キョウチクトウはびっくりするほどの毒を持っているし、ヤツデ、クリスマスローズ、スズラン、アジサイ、ヒガンバナなども有毒である。
我々が草木一般に対して勝手に抱いている「癒やし」とか「優しさ」みたいなポジティブなイメージをとは無関係に、実は禍々しいパワーを隠し持った連中があちこちに生えているのだ。こういうことを知ると、見慣れた公園の緑が、ちょっとワイルドなものに見える。