ユニオン・ステーション:シカゴ旅行記 2

ユニオン・ステーション

映画「アンタッチャブル」のハイライトのひとつが、ユニオン・ステーションでの銃撃戦のシーン。駅の入口からホールに繋がる広い階段で、脱税の証拠を握る帳簿係を隠そう(列車で逃がそう)とするマフィアと、それを阻止しようとするネス(ケビン・コスナー)とストーン(アンディ・ガルシア)の間で銃撃戦となる。そこに赤ん坊を乗せた乳母車が階段から落ちてゆく動きが絡んで、スリリングな名場面となった。アンディ・ガルシアの最高の見せ場である。

シカゴは街中をシカゴ川がちょうどカタカナの「ト」の字を描いて流れている。「ト」の横棒の右端はミシガン湖に接続している。川はミシガン湖から流れ出て西に(つまり横棒を右から左へ)2キロほど進み、そこで南北に分かれる。分岐点から川の西側を800メートルくらい南にすすんだ地点にユニオン・ステーションがある。

 

1913年着工、1925年竣工。現在ではシカゴを発着するアムトラック(長距離列車)は全てこの駅を使い、中西部への一大ハブ拠点となっている。ヘッドハウス(The headhouse)と呼ばれる重厚な駅建物の中に、グレートホール(Great Hall)と名づけられた大理石造りの大きな待合ホールがある。「グレート」に恥じない美しい大きなホールで、駅の待合室と呼ぶにはいささか不釣り合いな荘厳さがある。このグレートホール東側、カナル・ストリート(Canal Street)入り口からの大きな階段が、銃撃戦の撮影現場だ。

映像から想像していたより実物のほうがすこし小さいかな、という印象。でも紛うことなきあの階段である。映画では入り口ドアの上に大きな時計がかかっていたが、それは見当たらない。でも、ネスが立っていた階段脇の一段高くなったスペースに同じように立って、入り口ドアから出入りする人を眺めていると、今にも人相の悪い、ロングコートのマフィア一味が入ってきそうな気がする。現場のちからというのはすごいもので、この階段を乳母車が落ちてゆき、階段の踊り場で、帳簿係を人質にとって逃げようとしたマフィアを、ストーンが見事な射撃で仕留めたシーンが、まるで本当に起きたことのようにリアリティをもってよみがえる。(シカゴ旅行記 3 に続く)