Tonight Tonight Tonight (Genesis)

ジェネシスは活動期間が非常に長く、デビューは1969年。乱暴に分けるなら、ピーター・ガブリエル在籍時のプログレ色の濃い時期と、その脱退後、フィル・コリンズがボーカルも兼任するようになってからのポップ路線に分けられるように思う。

86年発売の「インビジブル・タッチ」(Invisible Touch)は後者の代表的アルバム。バンド最大のヒットで、メンバーは、フィル・コリンズ(Vo&Dr)、トニー・バンクス(Key)、マイク・ラザフォード(G&B)の3人編成。プログレバンドの「ポップ化」では最大の成功例とも言えるかもしれない。このアルバムからは何曲もシングルヒットが出ているが、一番有名なのは、「混迷の地」(Land of Confusion)だろう。イギリスのTV番組で有名なパペット(人形)を使って、当時のレーガン大統領やナンシー夫人、カダフィ大佐やら東西の政治家が登場する、イギリスらしい悪意たっぷりのビデオを覚えている人も多いのではないか。

僕がジェネシスを熱心に聴いたのはまさにこの時期で、「インビジブル・タッチ」とその後に出た「ウィ・キャント・ダンス」はよく聴いた。当時ニューヨークにいたので、「ウィ・キャント・ダンス」ツアーは、ニュージャージーのフットボールスタジアムまで観に行ったりした。

「トゥナイト・トゥナイト・トゥナイト」(Tonight Tonight Tonight)はアルバムの2曲めに収録された、プログレっぽい匂いを残した曲で、9分ちかくある大作。中間部のインストパートが長めだがまるで飽きさせない。打楽器のフィルイン、キーボードのアルペジオから壮大なメロディ、そしてギターがオーバードライブでバッキングに入るブリッジ部に繋がるところが何とも格好いい。フィル・コリンズが「Get me out of here!」とシャウトするところもまさに魂の叫びで鳥肌モノである。ギター・ソロのパートはないが、アーミングを使った効果音的なコードの入れ方や、後半のドライブ感溢れるリフなど、ハードロック好きにも勉強になる。