玉ねぎを炒める。レシピには、飴色になるまで、などと簡単に書いてあるが、なかなか大変だ。玉ねぎ先生の様子をみつつ、ヘラで絶え間なく返し、かき混ぜねばならない。火加減は、中火かちょっとそれより弱いくらい。この間、他のことをしてはならないし、できない。玉ねぎ先生はあなたの注目がすべて欲しいタイプなのだ。放っておくとすぐにヘソを曲げ、焦げ付き始める。半時間から場合によってはもっと長く、あなたは100%玉ねぎと向き合う必要がある。スマホとSNSによって、細切れの時間をマルチタスクに使うことに慣れた現代の我々には、これが大変難しい。数分おきに他のことがいろいろと気になるが、そこをぐっと堪えて玉ねぎと心を通わせねばならない。まさに修行である。
最初は白い玉ねぎのみじん切りが、透明になり、また不透明に戻る。
ここまで20分から30分。さらに炒め続ける。あるポイントを過ぎると、ブラウンがかった象牙色に変わり始める。
さらに10分ほど炒めると、ブラウンが濃くなり、いわゆる飴色に近づいてゆく。最初、フライパンに溢れるくらいあった玉ねぎは、ここまでの間にずいぶん減って3分の2くらいになった感じだ。
ここから時間をかけるともっと飴色が濃くなるのだろうけれど、今日はそろそろいいのではなかろうか。玉ねぎ先生は、これから挽肉と合わさって美味しいミートソースになる予定。