焼きたて

フランスの冷凍食品ブランド「ピカール」(綴りはPicard)が近くにあるので、ちょくちょく利用する。買うのはもっぱらパン生地である。パン生地は、クロワッサン、パン・オ・ショコラ、パン・オ・レザンの小ぶりなもので、一袋に10個入っていて700円くらい。焼き方は至って簡単で、オーブンを180度に予熱し、食べる分だけオーブン皿に並べて入れ、18分から20分待つだけ。ミニカーくらいの大きさの生地が、だんだんふくらんで、ブラウンの焼き色がついて、香ばしく焼き上がる様子を眺めて喜んでいる。待っている時間は湯を沸かしてコーヒーを淹れるのにちょうどよい。

小さなクロワッサンひとつあたり70円だから安くはないかもしれないけれど、ちょっとしたこだわりパン屋で買えばひとつ150円とか200円くらいするから、まぁ許容範囲だろう。何より焼きたてのパンは美味いのだ。外は香ばしくパリッと、内はふわりとしている。考えてみれば、焼きたては何でもウマい。縁日で食べる焼きそばやお好み焼き、ベビーカステラなんて、安価な材料で作っていて、冷めたら食べられたもんではないけれど、屋台で焼きたて熱々を買って食べるからよい。焼きたては七難隠すのである。

たとえ冷凍食品でも、朝にクロワッサンなんか焼いてインスタに上げてみたりすると、急に「余裕」や「充実」といった雰囲気が醸し出される。「ていねいな生活」みたいなフレーズも脳裏に浮かんだりする。同じ手作りでも、朝から蕎麦をこねて伸ばしたりしていると、「偏屈」とか「隠遁」みたいな雰囲気になるのとはいい対照である。今度は蕎麦に挑戦してみよう。