運動不足の解消に、週3、4回ジムに行く。ジムのパウダールーム1)というのか洗面スペースというのか、洗面台と鏡、ヘアドライヤーを備えた台が並んでいるスペースというのは、他の男性がどんなふうに身繕いをするのかが垣間見えて面白い。男子はトイレで化粧を直したりといった経験がないので、他人のそういった「プライベートな」姿を見る機会というのはほとんどないのだ。
そのパウダールームに「ドライヤーは髪の毛以外には使わないでください」という貼り紙がしてある。はて、どういう意味だろう、とそれとなく周囲を観察してみたところ、たちまち疑問は解けた。髪を乾かしたあと、陰毛にぶおーと温風を当てる人がけっこういるのである2)。甚だしきに至っては、スキンヘッドのムキムキとした男がドライヤーをむんずと掴むと、温風を頭にそよがせることもなく、一直線にぶおーと陰毛を乾かしたりしている。せめて数秒でも頭を乾かしたあと、ついでに、という程度なら、まあ仕方がない、とも思うが、主目的が「髪の毛以外」というのがあからさまだと、若干もやもやした気分が残る。
面白いので、その後、施設を利用するたびに観察していたのだが、ある仮説にたどりついた。髪の毛以外への利用頻度は、髪の毛の残存量に反比例するのではないか。つまり、頭髪がふさふさと豊かな人は頭髪以外を乾かすことはほとんどなく、毛量が減少傾向にある人、またはスキンヘッドを含む坊主刈りに近い人は陰毛方向への利用がちょくちょく見られるのだ。これは、ドライヤーを使う標準的な時間はどんな人でも概ね一定で、上の方の時間がかからない人は、その余り時間を下の方に使う、ということで説明できる。「ドライヤー利用時間一定の法則」とでも呼びたい。
似た法則はもう一つあって、これを「毛量一定の法則」と呼んでいる。もうおわかりの通り、頭髪が減少した人は、それを補うかのようにヒゲを伸ばしがち、という法則だ。これは過去20年に渡る観察から発見された。概ね観察対象が出版業界なので、他業界ではもしかすると違うかもしれない。