マカロニほうれん荘(全9巻)
鴨川つばめ著(少年チャンピオン・コミックス 秋田書店)
鴨川つばめは天才である。
ふきだしからセリフがリズムに乗って流れ出してくる。70年代のサブカル、ロックやパンクの躍動をページからこんなにほとばしらせたマンガは、多分、この作品だけだろう。当時小学生だった自分は、クイーンもレッド・ツェッペリンもまだ知らなかったけれど、そのビートをマンガの中から感じ取っていたのだと思う。中学に入ってクイーンをはじめて聞いたとき、あ、これ知ってる!聞いたことある!と思ったくらいだ。実際には聞いたことなどなかったのに。それほどこのマンガが音楽的であり、ギャグとビートが渾然一体となって、子供の頭のなかで鳴り響いていたのだと思う。
スラップスティックの何たるかを、スラップスティックなんていう用語を知る前にこのマンガに教えてもらった。縦横無尽、自由気儘にあちこち飛び廻るストーリーのくせに、けっこう丁寧に辻褄が合わせてあったりする。ミリタリーなフレイバーが隠し味的に効いている。ナンセンスなんだけど、優しい、柔らかな世界。
単行本の第一巻が発売される日、友達が学校帰りに本屋に駆け込んで「マカロニほうれん荘入った?」とレジのおばちゃんに聞いたところ、「ここは八百屋とちゃうで~」と言われたらしい。まぁ、大阪ならありそうなハナシではあるが、真偽の程は当時から不明1)。
完結させたかった作者に秋田書店が無理やり描かせていた終盤(7、8、9巻あたり)はさておき、マンガ史に残る大傑作だ。
↑1 | この話をしていた当人は、口をとんがらかして本当だと言い張っていた(笑)。 |
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