1984年にSuper Rock in Japanで初来日したBon Joviの記事を音楽雑誌で読んだのを覚えている。MSG、スコーピオンズ、ホワイトスネイクといったヘッドライナー級バンドのサポートといった扱いだったが、「若獅子」といった表現でとても好意的に書かれていた。そこから86年リリースの「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」(原題: Slippery When Wet)と88年の「ニュージャージー」(原題:New Jersey)で幾多の大御所バンドを飛び越えて、世界的スターダムに上り詰めるまであっという間だった。
殆どの曲は、ボーカルのジョン・ボンジョヴィとギターのリッチー・サンボラの共作で、この二人の組み合わせがこのバンドの全てといっていい1)。とくにリッチーのコーラスは、ボーカリストが二人いるといっていいほど強力で、他のHR/HMバンドを圧倒する魅力を見せる。ギタリストとしても、アコースティックからエレクトリック、バッキングから印象的なソロまで、どこをとってもハイレベルだと思うが、どういうわけか、ギターヒーロー扱いされない。確かに、技術的難度の高いソロをこれでもか、と繰り出すタイプではないけれど、若干気の毒である2)。「Wanted Dead or Alive」はそのトータルな実力を存分に発揮した曲で、12弦ギターのイントロから、サビのコーラス、ドライブサウンドに変わったあとのギターソロからアウトロまで、リッチーなしでは成立しない曲だ3)。
リッチーは2013年頃からバンドを離れてしまったようだ4)。それ以前から、離婚や女性問題、アルコール依存症とその治療だとか、いろいろと身辺が騒がしくなっていたようでもあり、心身ともに無理がたたったのか、なんとなく予兆めいたものを感じていたファンも多いのではないだろうか。オールドファンとしては、できればいつか、もう一度オリジナルメンバーでのライブが見たい。
マナティ湾を過ぎると1号線はキー・ラーゴ(Key Largo)に接続する。ここからフロリダ・キーズの島々を結ぶおよそ180キロが海上ハイウェイ(Overseas Highway)だ。もともとは鉄道が走っていたが、1935年のハリケーンで破壊されて廃線となったあと、用地と残った橋がフロリダ州に売却された。1940年代から旧道路からの付け替え、拡幅、現代的な橋へ架け替える工事などを経て1980年代にほぼ現在の姿になった。

オーランドで数日過ごした後、キーウエストに向けてクルマで出発。予定走行距離620キロ。東京から西に向かえば岡山の手前、北に向かえば八戸の手前くらい距離だ。むむむ、そう考えると遠いな。それに海の上のハイウェイを走るのだから、景色を楽しめる時間に通過せねばならぬ。暗くなってから、みてごらんいま海の上だよー、と言っても冷たい沈黙が車内を支配するであろう。急ごう、急ごう。というわけでオーランドを早朝に発って一路南へ、フロリダターンパイクをひたすら南下する。フロリダターンパイクはマイアミ近郊とフロリダ州中央部および南部をつなぐ大動脈。道幅も広く快適なドライブを楽しめる。



